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原題 Who Rules the World?
著者 Noam Chomsky
分野 歴史/政治/社会
出版社 Metropolitan Books
出版日 2016/5/10
ISBN 978-1627793810
本文 アメリカの言語哲学者にして現代文明批評家であるチョムスキーの久々の評論集。進行中のアメリカ大統領選でも如実に示されているように、今のアメリカには貧富の差や宗教的排他主義などがはびこり、かつてないほどの精神的かつ人種的、経済的混乱が広がっている。

こうした中チョムスキーは、アメリカの混乱の源は一握りの大金持ちを核とする“エリート集団”による非民主的な政策運営と、その力を背景としたごり押し政治にあると喝破する。さらに、このアメリカの偏った政治は、対外的には軍事第一主義となって新たな国際紛争の種をばらまいているとも指摘する。

チョムスキーは、知られざるドローン機を使った国際「暗殺計画」や、イラク、イラン、シリアにおけるIS(「イスラム国」)による暴力の連鎖に代表される現在の国際的混乱のそもそもの原因は、アメリカにおける反民主主義的動きの広がりにあるというのだ。

アメリカにおける政治、社会の底流の変化が、現在の世界的な混乱と紛争を招いているという本書の指摘は、これからの国際社会の行く末を占ううえで大きな手助けとなりそうだ。