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原題 Digital is Destroying Everything: What the Tech Giants Won't Tell You About How Robots, Big Data, and Algorithms are Radically Remaking Your Future
著者 Andrew V. Edwards
分野 コンピューター・テクノロジー/ビジネス
出版社 Rowman & Littlefield
出版日 2015/6/1
ISBN 978-1442246515
本文 今この瞬間にも、新たなアプリケーション、電子機器、通信サービスが優秀なプログラマーによって開発され、世界に向けて発表されている。それらはすべて、私たちの生活をより便利に、楽しくするためのものだ。

本書では、IT産業がもたらした規律、慣習、製品等を総称してデジタルと呼んでいる。そうしたデジタルの発達によって、人々が受けた恩恵は数え上げればきりがないだろう。しかし、それが私たちの文明に入ってきたことで、どんな悪影響や弊害がもたらされたかについては、あまり大声で議論されていない。

この20年余りの間に、人間同士の温かな交流はパソコンやスマートフォンの画面を通じた無味乾燥なやりとりに変貌し、どこの町にもあった小さな書店はアマゾンという巨大なインターネットショッピングサイトに凌駕され、有能な秘書の仕事さえもGoogleカレンダーとメールソフトさえあれば事足りるようになってしまった。かつては当たり前のように見られた光景が、知らず知らずのうちにデジタルという絶対的な存在により、少しずつ、しかし確実に姿を消している。デジタル・マーケティング・コンサルタントとして20年以上活躍してきた著者は、様々な視点に立ち、便利さと引き換えに人類が失ってきたものを列挙していく。

しかし、本書はこの先に悲惨な未来が待ち受けているという不吉な予言書ではない。私たちがデジタルの支配する社会をどう制御し、個人の幸せを守るかを考えるための指針となりうるものだ。