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原題 Wie man mit dem Feuer philosophiert. Chemie und Alchemie für Fluchtlose
著者 Jens Soentgen
分野 化学
出版社 Peter Hammer Verlag(独)
出版日 2015/8/10
ISBN 978-3779505266
本文 多くの人は化学と聞くと、実験室で三角フラスコを振る白衣の研究者や、学生時代に手こずらされた化学式などを思い浮かべるかもしれないが、実際には化学は、古代から人類の身近にあったものだ。本書は、アマゾンの森やヨーロッパの城にまで遡れる化学の歴史を、面白く解説してくれる。

一般的な物質を人工的な手段によって金に変えようという試みであった錬金術は、ファンタジー小説の中だけの代物ではなく、その試行過程でさまざまな化学薬品を生み出した近代化学の前身である。それより古い時代には、道具もなく専門家もいない森の中で、多くの物質が発見されたり精製されたりしてきた。

原題は「火で哲学的思想にふける方法」という意味だが、森の中でも錬金術でも現代の実験室でも、物質の転換や精製には火が使われてきた。化学者であるだけでなく哲学者でもある著者は、錬金術と哲学の関係性をはじめ、随所で化学に対する哲学的考察を付け加えてもいる。さらに、理論だけでなく化学を実際に体験して楽しみたいという読者のために、身の回りにあるもので化学実験をする方法も紹介している。