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原題 The Green Paradox: A Supply-Side Approach to Global Warming
著者 Hans-Werner Sinn
分野 経済/環境政策
出版社 The MIT Press
出版日 2012/2/3
ISBN 978-0262016681
本文 1997年、気候変動対策についての初めての国際的な取り決めである「京都議定書」が採択され、欧州連合(EU)や日本など一部の先進国が批准した。しかし、こうした国々が意欲的に進めている政策は、皮肉にも二酸化炭素(CO2)の排出を削減するどころか、増加させている。環境立国ドイツの経済学者である著者が、この現象「グリーン・パラドックス」の実態を検証する。

第1章では地球温暖化の要因となる仕組みを詳説し、第2章では京都議定書批准国のCO2排出量の削減の取り組みについて解説。第3章で「グリーン」ガソリンであるバイオ燃料の問題点を取り上げ、第4章で「一物一価の法則」を用いて気候変動対策の欠陥を指摘したのち、第5章で「グリーン・パラドックス」の現象を避けるための解決策を議論する。

日本では「グリーン・パラドックス」は原発推進説と捉えられている感があるが、著者は、原子力は事故のリスクと核廃棄物の処理問題などがあるものの、化石燃料の代わりとなる安価な燃料の選択肢の一つという立場をとる。

「京都議定書」から18年を経て「パリ協定」が採択された今、本書を読んで本当に効果のある地球温暖化抑止策を考えてみるのもいいのではないだろうか。