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原題 Narconomics: How to Run a Drug Cartel
著者 Tom Wainwright
分野 経済・経営
出版社 Public Affairs
出版日 2016/2/23(予定)
ISBN 978-1610395830
本文 2010年、メキシコ。政府は麻薬撲滅に奔走するも常に失敗に終わっていた。麻薬ビジネスの最前線であり、当時、世界でもっとも危険な都市といわれたシウダー・フアレスに単身乗り込んだ著者は、経済面から考えてメキシコ政府の政策は間違っていると指摘。その結論に至るまでの調査内容を興味深くレポートしている。

麻薬「産業」の規模は大きい。製品の企画に始まり製造、流通、マーケティングを経て、最終的な売却先は世界中に広がる2億5000万人の消費者。年間の収益は3000億ドルにも上る。

メキシコ入りするまでの著者は、欧米の購入者、いわば消費サイドから麻薬について取材を続けていたが、今回は一転してメキシコを中心とした中南米の生産者側の現場を精力的に調査。実情を知れば知るほど、麻薬カルテルが企業統治の整った他のグローバル産業と似ていることに気付く。麻薬産業の従事者も個人としては一般企業のビジネスパーソンと変わらない。ドスの利いたあだ名の組織メンバーは、トップから競合相手との合併を聞かされ抗争が中止になったとぼやいたり、コカインの原料であるコカの生産業者は自分の製品がいかに健康的で高品質かを熱く語る。他にもオンライン取引でアマゾンと変わらない丁寧な対応を見せる業者など、その姿は私たちの周りの人々と同じだ。

本書では、普通は知ることが難しい麻薬カルテルを、小説のようなスリルあふれる体験も交えながら、従来の経済学、経営学の手法を用いて冷静に調査している。