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原題 Notes from a Beijing Coffeeshop: Insights into Modern China---A Collection of Personal Stories
著者 Jonathan Geldart
分野 ビジネス/経済/社会
出版社 Lid Publishing
出版日 2015/9/1
ISBN 978-1910649145
本文 中国経済の動向には世界中が注目している。過去30年間にわたった高成長の減速、株価急落や不動産バブル崩壊の懸念、アジアインフラ投資銀行の設立、人民元の切り下げ。メディアからうかがえるのは、ますます国際的影響力を強める中国の姿だ。

さて、これだけ存在感を強めている中国だが、北京で本格的に暮らし始めた本書の著者Jonathan(グローバル企業のディレクター)は気がついた。「本当の中国は自分が思っていた中国とまったく違う!」

中国にはさまざまな都市がある。国際都市といえば上海であり、ほかにもさまざまな特徴をもった都市がある。しかし、中国のあらゆる都市の特徴をすべてもっているのは北京なのだ。政治と経済の中心である北京には、あらゆる都市から人々が集まってくる。都市だけでなく山岳地域や農村部からも磁石のように北京へ人が引きつけられている。首都北京は中国大陸の縮図なのだ。

本書は、著者が北京にあるカフェでコーヒーを飲みながら交わした何気ない会話をもとに綴られた、中国人へのインタビュー集である。インタビューに応じたのは新興富裕層となった主婦、好景気の波に乗るビジネスマン、弁護士、同性愛者、俳優、起業家、中国系アメリカ人女性、ライター、女性権利活動家、映画監督など多岐にわたる。

著者の鋭い観察眼と分析力により、何気ない会話や言葉遣いから現代中国社会や文化・歴史の知られざる一面を垣間見ることができる。ユーモアにあふれた文体で描かれた「普通の人々」との屈託のないやりとり。メディアや観光ガイドは決して取り上げない、不思議な中国の魅力を知ることができる。