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原題 The Edge of the Sky: All You Need to Know About the All-There-Is
著者 Roberto Trotta
分野 天文学/宇宙科学
出版社 Basic Books
出版日 2014/9/23
ISBN 978-0465044719
本文 宇宙論の最新の発見や未解決の謎を、英語で最もよく使われる1000語のみを用い、物語形式でわかりやすく説明する。世界最大の望遠鏡でダークマター(暗黒物質)をとらえようとしている女性科学者の目を通して、ビッグバンから太陽系の他の天体、ダークマターからダークエネルギー、宇宙の誕生から未来、ハッブルからアインシュタインの研究までが、誰にでも理解できるように語られる。

宇宙論をわかりやすく解説した本はいくつかあるが、語彙数を1000語にまで絞った例は他にないだろう。その中にはscientist(科学者)やuniverse(宇宙)さえも含まれていない。どうするか? 著者は別の言葉で言い換える。scientistはStudent-People(研究する人)、universeはタイトルにもあるAll-There-Is(あるものすべて)、the biggest telescopes(大望遠鏡)はBig-Seers(大きく見る道具)という具合だ。

サイエンスコミュニケータ、科学コンサルタントである著者は、一般の人々にわかりやすく科学を教えるプロだ。簡単な言葉を使い、複雑で抽象的な宇宙の仕組みを見事に表現している。読者は科学をより身近に感じ、読後は宇宙をまったく新しい視点で見ることができるようになるだろう。宇宙や最新の発見に興味はあるけれども、専門用語は難解だ、と思っている人々にうってつけ。また、比喩的表現や詩的な表現は読者の想像をかきたて、ときに専門用語で説明するよりも科学の核心に迫る。そのため、専門家でも十分本書を楽しめるだろう。