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原題 The End of Normal: The Great Crisis and the Future of Growth
著者 James K. Galbraith
分野 経済/金融
出版社 Simon & Schuster
出版日 2014/9/9
ISBN 978-1451644920
本文 2008年の世界金融危機以降、低成長や高失業率、住宅価値の下落、慢性的赤字、欧州危機の深刻化が見られ、“緊縮政策”と“景気刺激”という2つの誤った解決策を巡る陳腐な議論が繰り広げられている。

危機に関するこれまでの分析では、1950年代初頭から2000年までの経済成長を、低迷した1970年代を除けば正常な動きであったと捉えている。つまり、危機は悪政や悪人が引き起こすものであり、回復するにはその原因を正せばよいと考えるのだ。本書では、この考え方に疑問を投げかけ、正しい角度でこの危機を見直していく。

今日、正常な状態への回復を妨げているのは、実物資源費の高騰、無益な軍事力、デジタル革命による労力節約の影響、金融部門の法と倫理の崩壊という4つの要因だと著者はいう。世界金融危機はターニングポイントであり、不安定な経済状況の高まりのバロメーター、つまり新しい標準として今見直されるべきなのだ。著者が本書で一貫して述べる主張は、あらゆる経済学者の注目を集め、金融に関する重要な判断材料になるだろう。