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原題 Det blå lys: en roman om Marie Curie
著者 Stig Dalager
分野 文学/文化/歴史
出版社 Lindhardt og Ringhof
出版日 2012/8/29
ISBN 978-8711395851
本文 女性として初めて、また、二度もノーベル賞を受賞した科学者マリー・キュリー。著者は敢えて小説という形式をとることで、マリー・キュリーという人物の精神世界に深く入り込み、優秀な科学者として公的生活を送る姿と、1人の女性として私的生活を送る姿を立体的に描き出す。

本書でも、他の伝記と同様に、放射性元素のラジウムやポロニウムの発見など、マリーが科学界で成し遂げた数々の偉業を紹介する。しかし、著者が焦点を当てているのは、むしろマリーの複雑な人格だ。マリーの知性、強靭な意志、そして科学への献身は、成し遂げた偉業から誰もが知るものだろう。しかし、その裏に隠された女性らしさ、脆さ、精神不安定については、あまり伝えられていない。著者は、マリーが夫ピエールと夫婦として、科学を追求する同志として、仲睦まじく生活する様子と、幸せな生活の一方で、科学者として、妻として、母として働き過ぎ、神経を衰えさせていく様子も描いている。

完全無欠な才女ではなく、か弱い女性の一面もあわせもつマリーに、親近感を覚える読者も多いだろう。