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原題 Fallout from Fukushima
著者 Richard Broinowski
分野 ノンフィクション
出版社 ReadHowYouWant
出版日 2013/6/25
ISBN 978-1459653771
本文 元オーストラリア外交官の著者が、世界各地の事情通とのインタビューや緻密な資料調査によって、福島原発事故の発生から日本の原発の行方までを論じる。

2011年3月11日の東日本大震災と福島第一原発の事故は、世界の核の安全性をめぐる討議の焦点を、テロリストの攻撃から原発を守ることから、事故が起きた際の原子炉の安全確保や責任の所在といった現実的な事柄に変えた。本書は震災の当日、福島第一原発に何が起こったか、原子炉耐震性が確かなものだったか、被災地の住民がどのような生活を強いられているのか、放射能に汚染された土地がどのような長期的危険性を持つかを掘り下げて論じる。

また、核科学者や各国政府が放射能の人体へ及ぼす影響を否定し続けてきた歴史を、過去の核実験、原発事故をもとにして検証する。そして、世界の原発推進国と原発反対国の動向、および各国事情も調査。さらに、原発は持っていないがウランの輸出はするというオーストラリアの二面性について考える。最後に、日本の原発は徐々に終息に向かうと予測すると共に、再生可能エネルギー発電と関連産業育成により、日本は新たなワールドリーダーになれると提言する。

原発事故を日本国内で起こった災害ととらえるのではなく、原発をめぐる国際世論の中で大局的にとらえ、同時に日本が進むべき道を決めるために役立つ視点を与える。