原題 | The Fear of Insignificance: Searching for Meaning in the Twenty-first Century |
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著者 | Carlo Strenger |
分野 | 社会科学/心理学 |
出版社 | Palgrave Macmillan |
出版日 | 2011/2/15 |
ISBN | 978-0230113756 |
本文 | アーンスト・ベッカーの名著『死の拒絶』(1974年ピューリッツァー賞)は、死を拒否することが最大の動機付けである人間は、死から自分自身を守るために世界観と自尊心を持つと説く。ストレンガーはこうした実存心理学の核心となる考え方をもとに現代社会を分析する。 臨床心理学者であるストレンガーは、我々が人生の意味という感覚を失い、頻繁に不安に襲われる現状を指摘する。そして、その原因には、優勝劣敗の文化、拝金主義、成果の数値化、グローバル・インフォテイメント・システム(テレビ、インターネットなどによる地球規模の情報、娯楽の供給システム)による人間の商品化、比較対象のグローバル化などがあるとする。 我々の不安をいっそう高めているのが、「人間の可能性には限りがなく、望みさえすればなりたいものになれる」という幻想を煽る自己啓発文化だ。ストレンガーはこうした現象に警鐘を鳴らし、この間違った方向性に代わる生き方として「実存主義的」生き方を紹介する。 人生80年の現代にあって、40~50代の中年期は、「残された時間には限りがある」と悟ることで無駄なものをそぎ落とし、人生を本質的なものに絞る時期であり、実存主義的生き方のハイライトとなる。ストレンガーは臨床例を挙げながら、いわゆるミッドライフ・クライシス(中年の危機)は、「自分の人生において本質的なものは何か」という実存的な問いかけを自らに行うことで、後半生で創造性を発揮するための絶好の機会だと説く。 数多溢れる自己啓発書、人生指南書とは一線を画する一冊。 |