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原題 Traveling the Silk Road : Ancient Pathway to the Modern World
著者 Mark Norell, Denise Patry Leidy & the American Museum of Natural History with Laura Ross
分野 歴史
出版社 Sterling Signature
出版日 2011/10/4
ISBN 978-1402781377
本文 本書を開くと同時に、読者はユーラシアの広大な大地で何千年ものあいだ繰り広げられてきた旅に出る。惜しみなく使われている豪華な絵や写真の数々に目を奪われているうちに、遠い昔の異国の市場、灼熱の砂漠、絶大な権力を持った征服者たちの栄枯盛衰の世界へと導かれていくだろう。

シルクロードの歴史を簡単に説明したあとは、まず東の起点、西安(長安)へ。多言語の飛び交う100万人都市、世界最大の不夜城であった西安の工芸品、楽器、宗教などがふんだんな写真とともに紹介される。続いて旅はトルファン、サマルカンドを通りバグダードへと続く。

北アフリカから中央アジアに至るイスラム帝国の首都バグダードは、シルクロードの西の起点、終着点で、「知恵の都」であった。バグダードの章では千夜一夜物語や多くの発明品、工芸品などが紹介されている。

シルクロードの最終都市はイスタンブールだ。ギリシャ人の手からローマ人のビザンチン帝国へ、そして現在に至るまでの同都市の波乱にとんだ歴史を美しい絵とともにたどったあと、読者は最後に、シルクロードの時代に海の道として発達し、次第に陸路を凌駕していった南海路に案内される。マルコポーロやシンドバッドの冒険、船や陶磁器の美しい画とともにシルクロードの時代の終焉を感じながら、8000キロの旅は終わりを告げる。

写真集といってもいいほど、ほぼ全ページにカラー写真が掲載されており、思わず一気に目を通したくなる豪華で美しい本。