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原題 I Shall Not Hate: A Gaza Doctor's Journey on the Road to Peace and Human Dignity
著者 Izzeldin Abuelaish
分野 自伝/中東
出版社 Random House Canada
出版日 2010/4/27
ISBN 978-0307358882
本文 アブルアイシュはガザ地区で働くパレスチナ人医師。イスラエル人とパレスチナ人を分け隔てなく助けていた。ところが2009年1月15日、彼の自宅にイスラエルの砲弾が撃ちこまれる。そのとき、彼の3人の愛娘、Bessan、Mayar、Ayaはそれぞれ21歳、15歳、13歳。彼が娘たちの部屋に駆け込むと、3人の身体はすでにばらばらになってしまっていた。その前年には妻を急性白血病で亡くしていたアブルアイシュは、悲しみのどん底にありながら、それでもこういった。

「私はあらゆる暴力に反対です。それは憎悪と流血を悪化させ、溝を広げる。憎悪により生活を破壊することは簡単です。しかし、それを建設することは非常に難しい」

アブルアイシュ医師が3人の娘と1人の姪を殺された体験の中から、希望と和解のメッセージを込めて綴ったのが本書である。さらに、Daughters for Lifeという中東の女性の間に健康と教育を促進するための基金も設立した。「娘たちに再会したら、お前たちの血は無駄にはならなかったのだよ、と伝えてやりたい」と彼はいう。

当時、イスラエルのオルメルト首相が「アブルアイシュのあの状況を見て、泣かずにいられる人などいるだろうか」とコメントしたと伝えられている。