原題 | No Family History: The Environmental Links to Breast Cancer (New Social Formations) |
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著者 | Sabrina McCormick |
分野 | 乳がん/社会科学 |
出版社 | Rowman & Littlefield Publishers |
出版日 | 2009/6/16 |
ISBN | 978-0742564084 |
本文 | アメリカでは3分に1人が乳がんと診断され、11分に1人が乳がんで命を落としているという(2006年)。驚くべき数字だ。乳がんの患者数は、ここ60年で急激に増加している。しかし、治療薬の研究や治療そのものに何十億ドルもかける一方で、がんを防ぐための研究活動にはほとんどお金がかけられていない。健康社会学者である著者は、乳がん増加の理由と、予防に力が入れられていない理由を解明する。 乳がん患者の爆発的増加の原因は、もはや家族歴や個人の生活スタイルという問題では説明がつかない。研究の結果、さまざまな化学物質に発がん性があることがわかっている。洗剤や殺虫剤、水道管や化粧品など、実際問題、私たちは常に発がん性の化学物質に曝されて生活している。これこそ乳がんの最大の原因だ。しかし、政治や経済、医療の現場でさえも、化学物質について大きくは取り上げられない。がん撲滅への近道は発がん性物質の不使用であり、規制なのだが、企業はがん研究資金を寄付し、ピンクリボン運動キャンペーンを行う一方で、毒性の強い化学物質を製造しつづけている。医療の現場でも早期発見や治療に力を入れるばかりで予防への真摯な取り組みがない。問題はお金だ。発がん性のある化学物質なしで製品をつくるのは難しい。そして、がんの治療や薬は儲かるが、予防ではほとんど儲からない。政治、経済、科学者など、それぞれの思惑が真実を覆い隠してきたのだ。 日本でも乳がんの発症率はおよそ20人に1人(乳がん百科)、もしくは16人に1人(NPO法人J.POSH日本乳がんピンクリボン運動)という時代。治療法ばかりではなく、その本当の原因と予防法を知るべきときだろう。 |