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原題 Planet Chicken: The Shameful Story of the Bird on Your Plate
著者 Hattie Ellis
ページ数 320ページ
分野 ビジネス/農業/社会
出版社 Sceptre
出版日 2008/1/24
ISBN 978-0340921883
本文 「鶏肉はどうしてこんなに安いのだろう?」

そんな素朴な疑問から調査を始めた著者は、鶏の置かれている恐ろしく残酷な現状を次々と目の当たりにした。本書では、ニワトリの進化と飼育の歴史をたどり、現代の鶏産業のグロテスクなスキャンダルと人間の健康への影響を明らかにする。

人工孵化器で生まれ、身動きもままならないケージで、薬の混ざった餌を与えられ、窓もない建物で太陽光の変わりにビタミンDを与えられる。雌鶏はできるだけ多くの卵を産むように、食肉用の鶏は速く大きく育つように人工的に調節される。死の瞬間さえ苦しみや痛みを和らげようといった配慮は一切なされない。もはや鶏工場だ。さらに、こうして育った(作った)鶏の残留薬物が人間の健康をも脅かす。

利益と便利さを追求するあまり、人間は何かを踏み越えてしまった。著者が次々に暴く事実に誰もが憤りを感じ、あまりにも傲慢な自分たちの行いを反省せずにはいられないだろう。昨今、絶滅危惧種や黒マグロやイルカの保護に関心が高まっているが、その関心をほんのわずかでもニワトリに向けてほしいという著者の叫びが聞こえる。せめてニワトリも生き物だと認識してほしい。

本書には、西インド諸島のジャークチキン(乾燥肉風に調理された鶏肉)屋台やプロバンスのシェフ、再び本物の鶏肉を食卓に提供している先駆者など世界中の鶏肉好きの話や、伝統的な鶏肉料理も載っている。冷凍食品やファーストフードをやめて、きちんと育て、きちんと料理することが、ニワトリにとっても人間にとっても幸せにつながる。