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原題 Massive: The Hunt for the God Particle
著者 Ian Sample
ページ数 320ページ
分野 物理学/宇宙
出版社 Virgin Books
出版日 2010/7/5
ISBN 978-1905264957
本文 宇宙誕生の謎を解き明かす---その目標のもと、科学者たちは何世紀にもわたって、物質を形成する「質量」の起源を探究してきた。異なる素粒子の存在が仮定された1960年以来、これまでに16種類の素粒子が発見されてきたが、そのどれも質量の起源となりうる「質量を与える」性質は持たない。1964年に、エディンバラ大学のピーター・ヒッグスにより、すべての物質に質量を与える素粒子「ヒッグス粒子」または「神の素粒子」の存在が提唱されるも、いまだにそれは確認されていない。

ジュネーブ近郊の欧州合同原子核研究機高フ地下深くで、もっとも複雑な科学器具である大型ハドロン衝突型加速器が、この17番目の「神の素粒子」発見を目指し、2008年9月にメディアの嵐の中稼働した。ところがそのすぐ後に、漏電によるダメージのため再び電源が落とされることとなった。関係者はこれによって多大な苦痛を与えられたが、科学者たちは、再稼働して必ず「神の素粒子」見つけると信じてやまなかった。

本書では、この歴史的研究の裏で繰り広げられる科学者たちのエゴの衝突や野望、失敗から、この研究がもたらしうる危険性の懸念といった、これまでに決して語られることのなかった秘話を明かす。

科学的な話にとどまらず、文化や政治を盛り込んだ広範囲な歴史物語に仕上がっており、40年以上にわたって行き詰まりや高額な失敗といった苦汁を飲んできた著者と、ピーター・ヒッグスを含むキーマンたちとの前代未聞の接触が生んだ、ビッグスケールな読み物。