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原題 Transcendent Wisdom
著者 Darai Lama(英訳者:B. Alan Wallace)
ページ数 144ページ
分野 哲学/思想/宗教/スピリチュアル
出版社 Snow Lion Publications
出版日 2009/8/16
ISBN 978-1559393294
本文 世紀のインド人仏教詩人で、学者でもあるシャーンティデーヴァの著作『入菩提行論』(サンスクリット語原典名:ボーディーチャリヤーヴァターラ、『菩提行入門』とも訳される)は、大乗仏教の教えを詩形式で解説したものである。その、チベット仏教の中核となる思想を正確に説明する貴重な解説は、仏教文学の中で重要な位置づけを持つ。特に、第9章「完全なる智慧(般若波羅蜜)」は、難解な大乗仏教中観派の哲学を理解するために重要視されている。

ダライ・ラマは1979年、スイスにおいて、チベット人や西欧人など多くの聴衆の前で、この第9章のテキストを註釈し、解説する法話を行った。これを基にして編集されたのが本書である。『入菩提行論』第9章の主な内容は以下の通りとおり。

・1つの現象には、目に見えるあらわれから見た真理(俗諦)と、究極の存在の仕方から見た真理(真諦)があり、2つの真理は1つの本質の違った様相を捉えたとらえたものである。
・人自体に永久不変の実体はなく(人無我)、事象自体にも永久不変の実体はない(法無我)。
・4つの気づきの実践(四念処):?体の不浄・無常、?感受の苦、?心の無常、?事象の無我
・本当の存在はない、すなわち、物質的な存在はあってもほかに依存しない固有の実体はない(空)。それを論証するいくつかの論法。空を理解した智慧により悟りが開く。

ダライ・ラマの著書には本書のような法話集がたびたび見られるが、本書は一般の人に向けて口頭で発せられた内容なので、難解な仏教の教えを理解しやすいだろう。特に本書は、『入菩提行論』第9章を部分に分けて提示し、ダライ・ラマが細かく解説していくという形式となっていて、他の法話本と趣を異にしている。また、中観派の思想と異なる思想をあえて取り上げて、互いの思想を比較して論証し、理解を深める一助としている点も特徴的である。