原題 | How to Become a Scandal: Adventures in Bad Behavior |
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著者 | Laura Kipnis |
ページ数 | 224ページ |
分野 | メディア/社会/心理 |
出版社 | Metropolitan Books |
出版日 | 2010/8/31 |
ISBN | 978-0805089790 |
本文 | アメリカ社会を騒がせた4つのスキャンダルを取り上げ、心理学的、そして社会学的な分析を試みる。スキャンダルの詳細が臨場感あふれる筆致で描かれており、ワイドショーを見ているようなスリルと興奮を味わえる一方で、その切れ味鋭い分析に、読者は目を見張ることだろう。 読者は、冒頭からスキャンダラスな世界へと引き込まれる。美人宇宙飛行士が誘拐未遂犯と化した事件だ。三角関係のもつれに激昂したリサ・ノワックは、おしめをつけたまま1500キロの距離をノンストップで運転し、ライバルに向けて催涙スプレーを噴射し、誘拐しようとした。著者は、事の一部始終を生き生きとした語り口で伝えつつ、スキャンダルが持つ本質についての考察を随所に加えていく。 また、大きなスキャンダルは象徴的な事物とともに語られること(クリントンの葉巻、O・J・シンプソンの手袋、そして、リサのおしめ)、スキャンダルは大衆にとって、他人と道徳的な議論を交わすための足がかりであること、我々はスキャンダルを通して自己抑制の重要性を学んでいる、といったことが論じられる。 さらに、脅迫の罪で逮捕された判事の事件では、彼の深層心理に潜む自己破壊的衝動に注目する。モニカ・ルインスキーとの電話内容を世間に公表し、一躍全米の嫌われ者となったリンダ・トリップをめぐる騒ぎに関しては、一般大衆が偽善や、人物の表情といったものに対して、どのような反応を示すかということが論じられる。そして、自己の体験を誇張していたことが発覚し、メディアからのバッシングを受けた自伝作家の件では、誰もが持っている資本主義的な貪欲さ、自己顕示欲が明らかにされる。 事件を描写するホットな語り口と、クールな分析。両者の組み合わせが文体に独特の緊張感を与えている。一級の特ダネを集めたノンフィクションとして読めると同時に、個人、および社会集団の精神的力動に関する考察としても読める。 |