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原題 The Turban
著者 Chris Filstrup (Author), Jane Merrill (Author)
ページ数 264
分野 歴史
出版社 Reaktion Books
出版日 2025/02/01
ISBN 9781836390749
本文 ターバンの起源から宗教的な役割、そして現代のファッションや文化における位置づけに至るまで、その多様な歴史を辿る一冊。 ターバンは頭に巻きつける一枚の長い布だが、その形や意味は地域や時代によって異なる。本書では、アラビア半島を起源とするターバンがオスマン帝国を経てヨーロッパやアメリカへと広がっていく過程を、図版と当時のエピソードを交えながら詳しく解説。宗教的・伝統的な用途にとどまらず、国際貿易、ルネサンス美術、現代ファッションにおける役割にも光を当てる。掲載された86枚の図版は、ターバンの多様なデザインや用途の変化を視覚的にたどることができる。

西洋文化で流行と衰退を繰り返したターバンは、ヨーロッパの王族や貴族、アメリカのファーストレディ、ハリウッドのスター、マジシャンなど、さまざまな立場の著名人に受け入れられ、現代ではアクセサリーとして定着している。一方、シク教徒の男性がターバンを着用する理由、ブラックカルチャーにおけるターバンの役割にも触れ、アイデンティティの象徴としての側面にも焦点を当てる。異文化交流や社会的メッセージを発信するツールとしての意義を探り、時代や文化に応じた移り変わりを考察している。

また、ターバンが文化や芸術、社会に与えた影響、西洋で象徴的な存在となるまでの歴史、貿易や外交における役割、探検家や旅行者がもたらした影響、18世紀のトルコ趣味(テュルクリ)、ネオクラシック時代のファッションに取り入れられたターバン、アフリカ・カリブ圏における自己表現、20世紀以降の文化的観光とその本来の価値をめぐる議論まで、多角的な視点で掘り下げている。

東洋と西洋における交易の歴史などアカデミックな要素を含みつつ、文化やファッション、社会情勢といった幅広いトピックを具体的なエピソードとともにカジュアルに解説。 時代とともに異なる背景を持つ人々に受け入れられ、現代ではアクセサリーの一つとして社会に溶け込んでいく過程は興味深い。歴史だけでなく、文化や社会への影響にも注目し、多角的に分析された内容は、好奇心を持って読み進められる。