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原題 Open Play
著者 Sheree Bekker and Stephen Mumford
ページ数 208
分野 スポーツ/社会問題/思想哲学
出版社 Reaktion Books
出版日 2025/02/01
ISBN 9781836390534
本文 スポーツにおいて、一般的に女性は男性より劣っているとされる。しかし、これまで男性が達成した記録を女性が達成できなかったわけではなく、時間差で後から女性も達成してきた。この時間差は、生まれつき備わった能力の差以上に、女性が置かれている環境によって生じている。女子スポーツは男子スポーツに比べて不利な扱いを受けており、機会も資源も報酬も男子に及ばない。この扱いの差がなくなれば、スポーツにおける男女のパフォーマンスの差は縮まり、いずれはなくなるだろう。

また、スポーツにおける男女の分離は、女性が男性より劣っているという性差別的な認識を生み出す原因でもある。しかし同時に、スポーツで女性が良い結果を残すことは「女性は弱い」という誤認識を正すチャンスでもある。
「男か女か」でカテゴリー分けする従来のスポーツに代わり、女性に限らず全ての人に開かれたスポーツである「フェミニストスポーツ」という新たな概念を、著者らは提唱する。その背景には、性的マイノリティの人々によるスポーツ参加が少ないといった現状もある。

本書は、専門用語の使用を避け、一般読者にも読みやすい文章となっている。また、本書の原稿はパリ五輪前に完成していたとのことだが、パリ五輪で大きな議論を巻き起こした女子ボクシングのイマネ・ケリフ選手とリン・ユーチン選手についても触れている。
従来の差別的なスポーツの枠組みにNOを突き付け、従来のスポーツでは排除され、不利な立場に置かれてきた人々も巻き込む「フェミニストスポーツ」を推進していくべきだと、力強く訴えかける一冊だ。