原題 | Living Food |
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著者 | John Scanlan (Author) |
ページ数 | 256 |
分野 | 料理、健康法 |
出版社 | Milflores Publishing |
出版日 | 2024 |
ISBN | 9789718281499 |
本文 | 「汝の食事を薬とし、汝の薬は食事とせよ」。かつて、医学の父であるヒポクラテスはこう言った。著者のふたりはまさしくこの言葉通り、書籍名にもあるLiving Food=「生きた食」を心身の良薬とした。本書はそんな彼らの回想録兼レシピ集となっている。 著者のひとり、ジェトロ・ラファエルは若い頃に双極性障害と診断され、不安定な精神状態に長い間苦しんできた。薬でも改善されない症状に悩んだ末、彼は「生きた食」を用いた食事療法を生活に取り入れ、心身の健康の回復と安定に成功した。 この「生きた食」という言葉は、一般的には発酵食品や栄養をそのまま摂取するための生の食材などを指し、ジェトロの料理は主にこうした食材を用いて作られている。しかし、彼にとって「生きた食」という言葉は、もっと包括的な意味を持っている。ジェトロは科学的観点からも食事の意味を見直し、健康的な食事を続けても、幸福感をもたらすホルモンが不足しがちなストレスの多い状況下では、心身が完全に健康になることはないと気付いた。「生きた食」の効果的な組み合わせを知ること、そして環境や心の状態を整えること。これらを同時に達成することが健康の維持に必要なのであり、ジェトロの言う「生きた食」療法はこの全体的なバランスを取ることを意味しているのだ。自身の経験とこのコンセプトをもとに、ジェトロはフィリピンのケソン市にレストラン「Van Gogh is Bipolar」を開き、人生に何らかの悩みを抱えている人々に「生きた食」を使った食事、そして心身を癒すための空間を提供している。 もうひとりの著者であるロバート・アレハンドロは、ジェトロにとって20年来のパートナーである。2016年に大腸がんと診断され、当初は余命数ヶ月と宣告されるほどの差し迫った状況にあった。毎日繰り返される体の不調に苦しんだロバートを救ったのは、ジェトロによる食事療法だった。彼は「生きた食」により心身ともに癒しを実感、結果として宣告された余命よりもずっと長く健康を維持し、アーティストとしての人生を最期まで全力で楽しんだ。 本書では、ふたりがそれぞれ、あるいは共に向き合った苦悩と、それを乗り越えて喜びに至るまでの軌跡が、ロバートによる魅力的なイラストとともに綴られている。読者は、食が持つ癒しの力に支えられた二人の回想録を読み進めるにつれ、自身の食生活や心身の健康について改めて振り返ることになるだろう。 本文中、そして巻末には、多数のレシピが収録されている。ただし、これらは読者にこの食事を強要するために書かれたものではない。ジェトロもロバートも、この食事療法やレシピはあくまで著者個人が経験し効果を実感したものであり、一つの可能性を示しているに過ぎないと述べている。しかし、手に入りやすい・別の物に置き換えやすい食材とシンプルな手順で構成されたレシピは、読者が気軽に挑戦できるものばかりである。食の力を再確認するにはもってこいの内容となっており、読者に「作ってみたい」「食べてみたい」という意欲をもたらすだろう。 |