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原題 Learning to See
著者 Keith Sawyer
ページ数 352
分野 教育/美術/デザイン
出版社 The MIT Press
出版日 2025/04/22
ISBN 978-0262551649
本文 米国のトップクラスのBFA、MFA(美術の学士、修士)課程で教育を行う教授らは、自らも高名なアーティスト・デザイナーだ。彼らは学生たちに何をどうやって教えているのだろうか? 50校以上の大学や研究所で教える100人もの教授たちと、学生たちに10年にわたるインタビュー調査を行った結果、驚くべきことがわかった。「ものの見方を教える」ということがどの学校でも共通して重視されていたのだ。作品制作そのものより、見ることや修正を加える段階こそが難しく練習を要するのだと、ある教師(イラストレーター)は述べた。

学生に与えられる課題は、適切な制約を加えるなどすることで創造力を新たに発揮させるよう考え抜かれたものだ。一例として、あるデザインのコースでは日常的な品を5倍に拡大し、表面の質感まで再現した作品を制作させる。こんな課題を与えられることがなければ、例えばレモンの表面構造にじっくり注目などしないだろう。学生たちはこのようなプロジェクト課題への挑戦と、互いの作品についての批評を繰り返してプロとしてのものの見方、考え方を身につけていく。

本書では、絵画、彫刻、デザイン、建築など20以上の分野を取り上げ、学びの現場の様子や教師・学生の生の声を豊富な写真とともに紹介する。米国における最高レベルのアート教育の現場で、学生たちを自己変革のプロセスに導き、新たなものの見方、考え方、作り方を身につけさせる方法を知るための決定的な一冊だ。