原題 | All The Lonely People |
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著者 | Kannika Claudine D. Peña |
ページ数 | 224 |
分野 | フィクション |
出版社 | Milflores Publishing |
出版日 | 2023/02/01 |
ISBN | 978-9718281260 |
本文 | 私たちの生活は、財布、鍵、携帯電話、指輪、IDカードといった小さな物に驚くほど依存している。それらを失うと、一日がひっくり返ることさえある。でも、実際にそれらを失ったとき、何が起こるのだろう?そして、それを見つけた人たちは?失うことから生まれる偶然の出会いを描いた、6人が互いに繋がり合う、6つの物語。 失恋したばかりのヴィアは、人生で最悪の夜に出会った親切な人と偶然再会する。今度こそ、彼の親切に報いるか、少なくとも彼が落とした財布を返そうと決意する。 家族に置き去りにされて茫然としているロナルドは、家の鍵をなくしたという好奇心旺盛な10歳の少年ワルドと出会い、ワルドが家に帰るのを手伝う。 ジェマは、疎遠だった母親と再会し、母の失くした障害者手帳を返そうと訪ねていく。しかし、母親はアルツハイマーを患い、自分が誰かを覚えていない。渋々ながらもジェマは、長らく行方不明だった母の妹を探すことに同意する。 関係がすでに危機に陥っていたシンディは、婚約指輪をなくしてしまう。指輪を探してくれる専門家を雇い、一緒に指輪を探す中、指輪を失った理由と向き合うことになる。 ダン・イアンは携帯電話を失くしたことで元恋人との復縁を完全に諦めるが、新しい携帯電話を手に入れた途端、匿名のメッセージが届き始め、それが元恋人からのものかもしれないと疑い、やがて願うようになる。 職場の忘れ物記録帳の管理を担当するマリャは、喪失感を抱えている。一年前、日本の弁当工場へ出稼ぎに行っている間にフィリピンの家が火事になり、娘と母、兄を失ったのだ。だが、預かった忘れ物にまつわる物語を通して、自身の喪失と向き合い、やがて都市の雑踏の中で新たな人生を築いてゆく勇気を得る。 どの登場人物も、置かれている状況や心の内が淡々と、それでいて細やかに描かれており、物語にするすると引き込まれる。それぞれの人物が置かれた不幸な状況に対する無情さや絶望感から読者を目覚めさせ、痛みや失恋、悲しみも幸福と共存できるのだと気付かせてくれる一冊。 |