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原題 How We Age: A Doctor’s Journey into the Heart of Growing Old
著者 Mark Agronin
ページ数 320ページ
分野 健康/医学/セルフヘルプ
出版社 Da Capo Press
出版日 2011/2/1
ISBN 978-0306818530
本文 若き精神科医による「老い」に関する深い探究の記録。かつて、老いに対して「衰退」、「死に向かうもの」といったマイナスなイメージしかなかった著者は、養護ホームで100歳の溌剌とした女性患者と出会い、その意識が大きく覆される。さらにその後、精神科医として、平均年齢が90歳という高齢者たちと接する中、数々の新しい発見を得ていく。本書は、そうした実際の経験を丁寧に綴りながら、老いが持つ多くの「可能性」を示し、老いに対するバランスのとれた見方を提供する。

まず第1部では「老いとはどのようなものか」を、科学的、心理学的観点から解説する。第2部では、著者が関わったもっとも印象的な患者の老いの過程を紹介し、老いによる身体的、精神的、社会的変化と、老いの持つ「可能性」を示す。第3部では「記憶」の役割の変化に着目し、たとえ記憶が失われても、人生が続いていることを明らかにする。第4部では、高齢者自身とケアする人にとっての「知恵」の大切さを、そして第5部では、人生の「大先駆者たち」の考察を通して、高齢者からの学びが、将来老いる私たちへの大きな指針となることを示す。

全編を通じて紹介される患者の豊富なエピソードは、会話を織り交ぜながら、生き生きと描かれている。また、著者自身の家族のことや文学作品からの引用も含まれ、親しみやすく、読み応えのある作品となっている。