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原題 Future Cities
著者 Paul Dobraszczyk
ページ数 272
分野 建築、環境
出版社 Reaktion Books
出版日 2019/02/28
ISBN 978-1789140644
本文 近年、都市はさまざまな脅威に直面している。地球温暖化、人口増加、社会の分断化などによって都市での暮らしが危機に瀕しているのだ。不安に満ちた未来に対処するには、想像力をはたらかせねばならない。建築家、画家、映画製作者、小説家といった人々が都市のさまざまな未来像を思い描いてきたが、彼らの仕事は想像力の翼を自由にはためかすというより、科学的な予測にもとづいて行われる傾向がある。

現実と仮想空間が同時に存在するデジタルの時代においては、両者がどうからみ合うかを知ったうえで将来像を想像することが重要になる。現代においては、現実と仮想空間を明確に区別することなどできない。現実と未来予測のはざまを探る試みを行ってこそ、魅力的な都市像を打ち立てることができるのだ。本書は、想像力を存分にはたらかせ、水中都市、漂流都市、飛行都市、垂直都市、地中都市、廃墟、廃墟の再建といった都市のありかたについて考察していく。オランダでは漂流する都市は現実に建築されつつあるし、ドバイの摩天楼は一昔前のSF小説で描かれたものを連想させる。一方、発展途上国で貧しい人々がその場しのぎにつくりあげた区域は、サイバーパンクのディストピア都市を思わせるものになりつつある。

建築史を専門とするドブラシュチェクは、建築、小説、映画、絵画といった分野を横断することによって、想像の都市を現実と再結合し、現在に根付きつつある未来像を提示してくれる。