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原題 Ballroom
著者 Hilary French
ページ数 320
分野 歴史、趣味
出版社 Reaktion Books
出版日 2022/10/01
ISBN 978-1789145151
本文 本書は、「イングリッシュ・スタイル」として知られるようになった現代の「スタンダード」ダンス(ワルツ、フォックストロット、ヴェニーズワルツ、タンゴ、クイックステップ)と、ラテンダンス(ルンバ、サンバ、ジルバ、パソドブレ、チャチャチャ)の歴史をひもとくものである。20世紀中ごろに確立したこれらの10のダンスは、現在でもインターナショナル・スタイルとして存続している。

20世紀初頭のイギリスでは、アメリカのラグタイムとパリのタンゴが大流行し、全国で公的な舞踏場が建設されて民衆の間でダンスが一般化する下地となった。1920年代に確立した新たなイギリスのダンスは、ラジオとテレビによってさらに人々の間に広まり、1930年代には、フレッド・アステアとジンジャー・ロジャース主演のハリウッド映画などの影響でその人気にさらに拍車がかかった。20世紀後半には、エキゾチックなラテンダンスが流行して従来のイギリス式のダンスに取って代わった。旧式のダンスもラテンダンスも一時は人気が下火傾向にあったものの、近年ではテレビのダンス番組人気の影響もあり、再び脚光を浴びている。

ダンスの歴史は文化の歴史でもある。建築学を専門としながら自らもダンスを楽しむヒラリー・フレンチは、ダンスそのものだけでなく、現代芸術の潮流の影響を受けた舞踏場・ダンスホールのデザインや、衣装、音楽といった他の文化事象についても考察を加えていく。本書は、ダンスに興味を持つ読者だけでなく、広く西欧文化に関心を抱く読者にとっても知的満足を与えてくれることだろう。