原題 | Those They Called Idiots |
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著者 | Simon Jarrett |
ページ数 | 304 |
分野 | 歴史、社会 |
出版社 | Reaktion Books |
出版日 | 2020/12/01 |
ISBN | 978-1789143010 |
本文 | 本書は、18世紀のイギリスのコミュニティから、19世紀の精神病院、そして現代社会におけるケアまで、これまで知られることの少なかった知的障害者の歴史をたどるものである。知的障害者の施設で働いた経験も持つサイモン・ジャレットは、法廷記録や俗語辞典、小説、旅行記、美術、劇といった、人々の日常生活を如実に示す史料を駆使して、知的障害者が社会の中でどのようにとらえられていたかを明らかにしていく。 18世紀にはコミュニティの一員として受け入れられていた知的障害者は、19世紀末にはコミュニティから排除され、精神病院に押し込められてしまう。本書では、この態度の変化をもたらしたさまざまな要因を、道徳、イデオロギー、世論、風俗、市民意識といった視点から考察する。知的障害者に対する社会の態度は、18世紀に始まったグローバル化による人種と知性に関する考え方の変化の影響を受け、19世紀中ごろには、科学的な根拠があると見せかけた差別的なとらえ方が支配的になっていく。ダーウィン以後には優生学的な考えによってその傾向に拍車がかかり、ちょっと変わっているにせよ無害とみなされていた知的障害者は、人種差別的な考え方とも結びつき、脅威をもってとらえられるようになってしまった。ナチスによる知的障害者の大量虐殺はその悲しむべき帰結である。 知的障害に対する考え方は、ヒューマニティ、精神、アイデンティティ、人種、人権といったより大きな概念と密接に結びついている。かつて変わってはいるが社会の一部とみなされていた知的障害者は、隔離・排除すべき存在に押しやられたのち、現在では一定の条件の下で再び社会に受け入れられつつある。知的障害者はコミュニティへの再加入に向けて格闘中だが、その努力を成果に結びつけるには、過去に学び、歴史をひもとく必要があるのだ。 |