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原題 Hedgelands
著者 Christopher Hart
ページ数 208
分野 環境/自然保護/社会
出版社 Chelsea Green Publishing UK
出版日 2024/04/18
ISBN 978-1915294197
本文 英国の農村地帯に息づくヘッジローとの暮らしと、その生態や歴史を探る1冊。ヘッジローが私たちの言語、景観、文化とどのように深く結びついているかを明らかにする。
ヘッジローとは、樹木や灌木で作られた生け垣のことで、英国の農村風景に欠かせない存在だ。所有地の境界を示すために人々の手で作られたヘッジローは、同時に多くの野生生物にとって貴重な生息地となり、地球上でも最も重要な「境界」の生息地のひとつとされている。英国には40万キロメートルに及ぶヘッジローが存在するが、第二次世界大戦以降、その50%が失われ、生態系に深刻な影響を与えている。
著者クリストファー・ハートがヘッジローの歴史を掘り下げ、サンザシやハシバミといった植物や、ウズラ、サヨナキドリ、ハリネズミ、ハタネズミなど、ヘッジローに生息する多様な野生動物を紹介する。
本書では、環境にとってはヒーロー的存在であり、気候変動対策にも貢献するヘッジローが、鳥類や哺乳類、昆虫たちの生息地再生にどれほど役立っているかが示される。木々や植物が生い茂るヘッジローは、森林や草原、湿地においても生態系の多様性を維持し、二酸化炭素の吸収を助けているのだ。
さらに、イングランド南西部での自然再生活動を通じて、著者は生け垣の修復がいかに簡単で楽しく、やりがいのある作業かを示している。郊外はもちろん都会に住んでいる人々にも、小さな取り組みが将来的には生け垣や環境に大きな影響を与えることを教えてくれる一冊だ。