原題 | The Newsmongers |
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著者 | Terry Kirby |
ページ数 | 336 |
分野 | メディア・マスコミ・時事 |
出版社 | Reaktion Books |
出版日 | 2024/08/01 |
ISBN | 978-1789149418 |
本文 | 現代英国で最も強力な政治勢力といえば労働党だろうか、それとも保守党? あるいはポピュリズム勢力? いや、それはタブロイド紙だ。 タブロイドと聞いてまず思い浮かぶのは、ダイアナ妃を追ったパパラッチや、ヘンリー王子と妻メーガン妃を執拗(しつよう)に狙うメディアによるプライバシー侵害かもしれない。ただこれは、今に始まったことではない。「タブロイド」という言葉がジャーナリズムの分野で使われるようになったのは1900年のことだが、性やスキャンダル、犯罪報道を売りにしたニュースの歴史は、はるか16世紀までさかのぼることができる。 不道徳な行為や性を目玉とした1970年代の「サン」、ブレグジット(英国の欧州連合離脱)を支持した「デイリー・メール」のポピュリズム、そしてセレブの追っかけ「メールオンライン」が台頭する2000年代まで——。電話のハッキングやプライバシー侵害、賄賂など、違法な手段もいとわず大衆が望むゴシップを追求するタブロイド紙が英国の政治に与える影響は、私たちが考えているよりもはるかに大きい。 本書では、タブロイド界を牛耳るルパート・マードックを始めとし、メディア王や編集者たちの発行部数をめぐるバトルや、彼らが権力、富、そして名声を求める中で起こしてきた数々のスキャンダルをたどる。筆者のテリー・カービーによれば、考え方や行為手法としての「タブロイド」はこれまでも、そしてデジタル時代のこれからも存在し続ける。私たちは、なんといっても「タブロイド惑星」の住民になってしまったのだ。 タイトルの『The Newsmongers』は「ゴシップ屋」の意味。本書はまさにその名の通り、タブロイド紙の起源から現代までの歴史をまるでゴシップ記事を読むかのように学ぶことができる。ベテランジャーナリストだからこその綿密な調査に裏付けられた良書だ。 |