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原題 The Assyrians
著者 Paul Collins
ページ数 216
分野 歴史/考古学
出版社 Reaktion Books
出版日 2024/10/01
ISBN 978-1789149234
本文 現在の北イラクを中心とするアッシリア帝国は、全盛期の紀元前660年ごろ、エジプトからイランにわたるオリエント世界を初めて統一した国である。強大な軍事力を誇り、非占領地の何万人もの人々を強制移住させた地方行政官や、神の意志を伝える学者らに支えられて繁栄したが、統一からわずか50年後の紀元前610年ごろには滅亡した。
時は流れて、1800年ごろからヨーロッパの人々がアッシリアの遺跡の発掘を始め、彫刻や壁画、楔形文字が刻まれたおびただしい数の粘土板などを発見した。残された彫刻には戦争や狩りをモチーフにしたものが多く、アッシリアの人々は残虐だったと考えられてきたが、近年の研究からはこれまでとは違う姿が見えてくる。

本書はエジプトやインカ、マヤなど各地の古代文明を探求する「失われた文明」シリーズの最新作である。シリーズは単に歴史をなぞるだけではなく、芸術や文化も含めた幅広い視点から、その文明の重要性を考察するものだ。本書も同様に、建造物や彫刻、粘土板などの多数の図版を参照しながら、アッシリアの起源から繁栄、滅亡、そして後世に与えた影響まで丁寧に解説している。

また、これまでアッシリアに関する和書はごくわずかだったが、2024年には相次いで『アッシリア 人類最古の帝国』(山田重郎著、筑摩書房)、『沈黙する神々の帝国 アッシリアとペルシア』(本村凌二著、講談社)が刊行された。それだけ研究が進み、アッシリアに注目が集まっている証拠と言えるだろうし、本書もそのニーズに応えられる一冊である。