原題 | Plunder? |
---|---|
著者 | Justin M. Jacobs |
ページ数 | 240 |
分野 | 歴史、考古学、国際関係 |
出版社 | Reaktion Books |
出版日 | 2024/08/01 |
ISBN | 978-1789149487 |
本文 | かつて植民地だった国々が欧米諸国に文化財の返還を求めているというニュースをしばしば耳にする。歴史家であり考古学の専門家でもある著者は、欧米の博物館が所蔵する非欧米諸国起源の「文化財=略奪されたもの」といった見方が定着しつつあることに警鐘を鳴らす。十把一絡に非道徳的な方法で博物館の所有になったと考えては、文化財が海をわたった歴史上の文脈や歴史の綾(ニュアンス)を見落としてしまうというのだ。 著者は、略奪があったこと否定しているのではない。略奪は間違いなくあった。しかし、略奪は文化財が流出した原因のひとつに過ぎず、その対象になった文化財の数も実は決して多くはなかった。ナイジェリアが大英博物館に返還を求めている「ベニン・ブロンズ」などを例に、著者はこの点を明らかにする。略奪のほかにも、外交目的の贈呈、古物商(antiquities dealers)による商取引、考古学者による遺跡の発掘調査や文化遺産/財宝目当ての探検をきっかけに文化財は欧米人の手に渡っていったのだ。 本書は、大英博物館所蔵の「パルテノン・マーブル」やエジプトのツタンカーメン王の発掘調査、敦煌文書を手にいれた研究者/冒険家のシルクロード探訪など多くの事例を通じて、上述の5つのきっかけを考察していく。著者の歴史に対するアプローチは、「昔の人々に代って私たちが(現在の価値観や常識に基づいて)話しをするのではなく、昔の人々に話しをさせる」というものだ。読者は、著者に導かれながら当時の関係者(欧米の兵士や外交官、古物商、考古学者兼冒険家、そして彼らと接してきた現地の人々)の声を聞くことになる。私たちの先祖は、今の私たちと同じような考え方をしていたのだろうか? 本書を読むと、博物館に行きたくなる。ガラスケースにおさめられた展示品がどのように博物館に辿りついたのか思いを馳せたくなる。 |