原題 | The Greatest Shows on Earth |
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著者 | Linda Simon |
ページ数 | 288 |
分野 | 歴史、芸術(パフォーミングアート・舞台芸術) |
出版社 | Reaktion Books |
出版日 | 2023/04/01 |
ISBN | 978-1780233581 |
本文 | 本書を手に取るとまず目に飛び込んでくるのが美しいイラスト、わくわくするような写真の数々だ。そこに歴史的なディテールが豊かに加わり、逸話をまじえサーカスの歴史が語られていく。読了後には、なぜ私たちが空中ブランコに夢中になり、スパンコール付きのきらびやかな金色の衣装に憧れるのか、その理由が分かるかもしれない。 サーカスの原型とも言えるパフォーマンスの歴史は古く、紀元前13世紀のエジプトではすでに美しい衣装を身にまとい体を大きく反らせ演技をする女性の姿が描かれている。19世紀パリではロートレック、ドガなどの著名な画家たちもサーカスに魅了され絵画のモチーフとして扱い、多くの作品が生み出された。本書は全10章から成り、サーカスの歴史に沿いながら章ごとにトリックライダー、綱渡り、剣呑み、動物調教師、曲芸師、ピエロなど、プロとして現場でパフォーマンスに身を捧げる人々にスポットをあてていく。読者は本書を読み進めるごとにサーカスの楽しさはもちろん、センセーショナルで騒々しく、時にはゾッとするような世界から抜け出せなくなっていくだろう。 18世紀イギリスのヒポドローム(曲芸場)、19世紀パリのサーカス、画家トゥールーズ=ロートレックやピカソが空中芸人やピエロに魅了された場所など、著者は近代サーカス創成期にさかのぼりその魅力を記している。また、当時新進気鋭であったリングリングサーカスやバーナム・アンド・ベイリー・サーカスを取り上げる。それらのサーカス団が先頭に立ちアメリカのサーカス黄金時代を築き上げていく様子は、読者にとっても映画を観ているようにスリリングで楽しめるだろう。 近年のサーカス事情についても詳細が語られている。オーストラリア発の「サーカス・オズ」、ニューヨークの「ビッグ・アップル・サーカス」、日本でも人気の「シルク・ドゥ・ソレイユ」の大スペクタクルなど、サーカスが近年どのように変貌を遂げてきたのか。具体的な内容と共に明らかにされている。 楽しさに満ちた本書は、古今東西で人々を魅了し続けてきたサーカスのパフォーマーたちと対話をしているような臨場感がある。できるならサーカスのテントの中へ逃げ込み、現実を忘れしまいたいと夢想するすべての人に手に取ってもらいたい一冊だ。 |