ブックレビュー
| 原題 | The Lost Flock |
|---|---|
| 著者 | Jane Cooper |
| ページ数 | 224 |
| 分野 | 自然保護、農林水産 |
| 出版社 | Chelsea Green Publishing UK |
| 出版日 | 2023/09/14 |
| ISBN | 978-1915294395 |
| 本文 | 本書には、主婦として都会で暮らしていた著者が、希少種の保護という思いもよらなかった世界に飛び込んで保護のためのコミュニティーを作り上げる、異色の実話が記されている。著者のたくましさや、羊たちに対する愛情、信念からかつてない感動と勇気をもらえる、「オンリーワン」の1冊だ。 冒頭から、著者の「とんでもフットワーク」がさく裂する。希少種の羊（ボーレー種）の毛や独特の可愛らしさに惚れ込むやいなや、イギリス中を車で駆け巡って20キロ近くの毛を集める。仲間とともに毛のゴミ取りも行い、当時発売されていなかったボーレー種の手編み糸を製品化する。周囲の手を借りながら、「ボーレー種大好き道」をばく進していく。オークニー諸島に移住して、ボーレー種の飼育・繁殖まで始めてしまう！ 著者の「ボーレー種愛」が揺らぐことはなく、最高に痛快で、そして感動的だ。著者は思いがけず、ボーレー種の特殊なグループ（ロスト・フロック）を飼育する唯一の牧羊農家という責務を負う。しかし、著者の愛はブレない。関係者を探してはアプローチし、ボーレー種の毛や肉、皮などから保護資金を得る仕組みを作り上げる。食肉処理場の閉鎖という大ピンチが起こると、その窮状を訴えるために1000人分の署名を集め、スコットランドの農業者連盟が主催する会合でスピーチをする。一体どこで止まるのか、いや、止まらない。数多の経験を経て「若手農業者とともに島々にまたがる保護コミュニティーを作る」ことを決意する場面は、最も感動的だ。 本書は、ボーレー種への愛がつまった女性起業家の自伝だ。日本の起業者数は2017年に477万人にのぼっており、首都圏の地方移住希望者は2021年に309万人と推定されている（参考：総務省統計局の就業構造基本調査、ふるさと回帰支援センターの地方移住に関する調査）。本書は、自然保護や農林水産業に携わっている人々だけでなく、起業や地方移住によって関連する仕事に挑戦したい人々に、新たな視点や、挑戦するパワーを与えてくれるだろう。 |
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