ブックレビュー
| 原題 | The Perfect Medicine |
|---|---|
| 著者 | Brodie Ramin M.D. |
| ページ数 | 216 |
| 分野 | スポーツ／健康／医学 |
| 出版社 | Dundurn Press |
| 出版日 | 2021/09/07 |
| ISBN | 978-1459748200 |
| 本文 | 長寿、健康、幸せを叶え、あなたを強くしてくれる奇跡の万能薬が存在する。ランニングだ。しかし、そのせっかくの秘薬を活用する人がとても少ないのが現状である。過酷な狩猟採集時代の後、農業や牧畜が可能となり、産業革命を経た現代人は、人類史上、座っている時間が最も長いと言われ極度の運動不足に陥っている。これは深刻な問題だ。特に成長期の子どもは、この時期の運動量がその後の心身の発達に大きく影響するため注意が必要だ。 本書では、医者でもある著者が、糖尿病、高血圧、不安症といった病気をランニングで予防・治療できるという発見について語る。ちなみに、汗をかく程度の運動であればランニングに限らなくてもよいのだが、三十代初めに走ることの喜びを再発見して以来、ランニングの虜となった著者は、本書ではランニングをテーマとして取り上げる。 まず、人類の祖先が木の上から地上での生活へ移行し、四足歩行から二足歩行を行うようになった経緯、人類がそもそも地上で走るようになった起源、人間の身体の特徴や進化の過程を詳しく考察する。次に、ランニングが心身の健康に与える効果や、依存症克服への活用についても紹介する。自然と触れ合うことが人間の心に良い影響を与えることも強調している。他にも、より速く走るための戦略を詳しく取り上げた章や、怪我など、ランニングをする上でのリスクについてまとめた章もある。本書は、ランニングを代表とする運動の科学を探求し、その利益を最大化することで最高の自分になるためのアドバイスを与えてくれるだろう。 父親の仕事の都合でハイチ、バリ島、タンザニア、エジプトなど様々な国で過ごした子ども時代、妻との馴れ初めや夫婦そろってメディカルスクールへ進学した経緯、出場したマラソンでの出来事など、著者の人生における多彩なエピソードが散りばめられた自伝のような側面も魅力的だ。読書家でもある著者が、本書の内容に説得力や深みを持たせるのに様々な引用も興味深い。読み応えある一冊。 |
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