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原題 The Natural Order of Money
著者 Roy Sebag
ページ数 104
分野 自然、環境、ビジネス、経済、政治
出版社 Chelsea Green Publishing
出版日 2023/05/04
ISBN 978-1915294227
本文 本書は人間と金と自然の間に本来備わっている関係を論じている。私たち現代社会に生きている人々は、なぜ食べ物が手に入るのが当然だと考えてしまうのだろう。そもそも、なぜ農業従事者と社会の他のメンバーとの協働が可能になったのだろうか。さらになぜこの協働が自然の面でも社会的にも持続可能になったのだろう。農業従事者と、生産される食糧が欠くべからざる重要性を持っているというのが、本書に示されている答だ。そして自然貨幣こそが、永続する繁栄を確かにするための具体的な手段となるかもしれないと論じている。

自然はエネルギーとエントロピーに支配され熱によって動かされているシステムである。新陳代謝はエネルギーをため込んで消費するプロセスだ。この熱力学的システムを動かしているエネルギーの源は食料であり、燃料であり、基本的な諸物質である。人間の協働活動もまた熱によって動かされている。最初の経済活動は食料や燃料や基本的な諸物質を入手しようと自然とかかわった者たちによって引き起こされた。実体経済はエネルギーの具現物を生み出す一方でサービス活動はそれを消費するだけである。真の経済活動は人間社会の根幹をなしその限界も見返りも自然の基準に左右されるのだ。したがって自然保護に関する説明責任は社会の誰しもが担っており、私たちは、必要とするエネルギーのために自然とやり取りしながら活動する。
 
 農作物や燃料などの収穫・獲得に従事する人間たちにとっては、収穫物が報酬であり収穫量が評価の物差しであった。そうした自然の尺度は貨幣の登場により多様な経済体制を構成するほかのメンバーにまで広まって行った。貨幣が共同体の中で共通の物差しや報酬として機能するのだったら、それこそかつての実体経済が依拠していた農作物や鉱物や燃料のようにエネルギーを具体化した物質と同じ具体的な存在である。したがって貨幣もまた自然保護に対する説明責任を負うのであり、実体経済が自然と協働して成長すればその周りのより大きな経済体制も繁栄するし、そうでなければ打撃を受けてしまうのだ。この筆者の主張は従来の貨幣の概念とは大きく隔たっており、飽くことのない人間の欲望に自然保護に対する説明責任が制限をかけるという点が筆者の論点のカギとなっている。さらに人と自然の協働を持続可能にする貨幣、自然のサイクルの中で安定した物差しと報酬になりうる貨幣とは「金」であると筆者は主張している。