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原題 U.S.-Taiwan Relations
著者 Ryan Hass
ページ数 184
分野 政治/外交
出版社 Rowman & Littlefield Publishers
出版日 2023/04/15
ISBN 978-0815740346
本文 米国の台湾への関心は極めて高い。米国は、台湾を取り巻く安全保障上の懸念に関し、非常に敏感になっている。また台湾との年間貿易総額は、フランスとの総額をも上回る。世界全体のサプライチェーンにおいて、台湾が極めて重要な役割を持つことは、米国も認識しており、米自動車メーカーが部品調達に苦心していたとき、ホワイトハウスの高官は、台湾の友人に連絡して、主要部品の増産を求めたという。つまり米国と台湾は深く、密接で、重大な関係にあるのだ。米国と台湾の当局間では、外交的なやり取りが活発に行われている。
 ところが、こうした関係はあくまで非公式なものにすぎない。台北に、米国大使館は設置されていない。米国内にある台湾の外交窓口機関では、台湾の旗を掲揚することが禁じられている。双方の政府高官の行き来も、著しく制限されている。同盟関係や相互防衛に関する条約も締結されていない。米国が台湾を「国家」として言及するようなことがあれば、東アジア外交において物議を醸すだろう。過去40年にわたり、米国は中国と正式な国交を維持し、台湾との関係は非公式なままだったのだ。
 本書では、東アジア外交の専門家である著者三人が、米中台間に横たわる様々な問題について論を展開していく。米国と台湾は、どのような過程を経て、現在のような関係を築いたのだろうか? そして、米台関係はどこに向かおうとしているのだろうか? また中国は台湾との祖国統一に意欲を見せるが、それをめぐり、米中間での戦争は起こりうるのだろうか? 本書では、こうした本質的な問いについて検証していく。
 米中台の情勢をめぐる混乱や対立は、日本にとって対岸の火事でないのは言うまでもない。現在、日本は米国との同盟を堅持し、台湾とも良好な関係を築いているが、中国との関係には不安な要素が残っている。米中台について今一度、理解を深め、これから日本がとるべき外交政策の方向性に関しても考えさせる一冊だ。