原題 | Arming the World |
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著者 | Geoffrey S. Stewart (Author) |
ページ数 | 352 |
分野 | 歴史、兵器 |
出版社 | Rowman & Littlefield Publishers |
出版日 | 2024/04/02 |
ISBN | 978-1493078585 |
本文 | 1851年、第1回ロンドン万国博覧会はイギリスがその威容を世界に示すことを目的に開催された。会場にはクリスタルパレスと称された巨大な温室状の建物で、その中心には当然ながら英国が、さらにヨーロッパの国々がスペースを割り当てられ、そこからはるかに離れた片隅に新興国であったアメリカの展示場はあった。そうした扱いとは裏腹に、いったん展示会が始まるやアメリカの展示は評判を呼ぶことになる。イギリスの錠を次々とピッキングした錠前職人、穀物を一気に収穫できる刈り取り機、リボルバー式のコルト拳銃など来場者の耳目を集めた新機軸に隠れてひっそりと出展された6本のライフル銃は部品の交換を可能にしたという点で、最も重要な展示品だったかもしれない。 当時イギリスやヨーロッパで製造されていたマスケット銃は多種多様な部品をそれぞれ専門の職人が作成し、さらにやすり掛けなどの手作業を施しながら組み立てるという手工業の産物であったため、変化に対応することが難しく生産量に限りがあった。銃自体も銃製造の技術も標準化され手を加えることができる点はないという認識だった。しかしアメリカではすでに大量生産方式の銃工場を完成させ品質管理にも多くのリソースを割いていた。さらに新たな技術改良のおかげで、アメリカの銃製造者たちは手工業では実現できなかった新たなデザインの開発にも乗り出した。そのさなか南北戦争が勃発し北部政府は銃産業に資金を注入したため、戦後のいわゆる「金ぴか時代」には膨大な生産力と多様な種類の銃尾装填式銃とともにアメリカの銃製造業は一気に世界のトップに躍り出たのである。 その後アメリカの銃はヨーロッパを中心に世界に広がり、各国の勢力バランスにも大きな影響を与えることになる。本書は世界が新たな武器で再軍備を進めようとしたことを好機ととらえ、歴史との思いがけない出会いをも利用した人々の物語である。 |