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原題 Project Management in the Hybrid Workplace
著者 Phil Simon (Author)
ページ数 352
分野 経営、ビジネス、マネジメント、組織改革
出版社 Racket Publishing
出版日 2022/06/21
ISBN 979-8985814705
本文  月から金、9時から5時、対面方式で、という仕事の世界とはもう永遠におさらばだ。国によって違いはあるものの10人中9人の人がオフィスに戻るくらいなら仕事を辞めると考えている。一方リモートでハイブリッドな仕事環境が定着したためプロジェクトを管理したり新製品を世に送り出したりするのにかなり手ごわい障壁が現れている。誰もが昔の、オフィス中心のやり方に慣れてしまっている。打ち合わせや会議、商談はどうするのか。チームワークは。人事評価は。個々のデジタル技量は。労力を提供する主だった者たちがどこで働いているのかも何をやっているのかもわからないことが多いのにどうやってプロジェクトを無事に成功させようというのだ。

 本書の主張は仕事が根本から変わってしまった――しかもこれからもずっとそうであるということだ。したがってプロジェクトを管理したり製品を世に送り出したりするやり方もまた変わらなければならない。全くの白紙からスタートする必要はないが古くからある原則がまだ適用できるかは、見直してなくてはならない。従来のやり方のまま通用することも確かにあるだろう。しかし、何か新しい基準や規範を当てはめるべきこともある。とりわけリモートでは、ハイブリッドな労働環境の現実に対処できるものが必要だ。

 筆者はアジャイル開発、人的資源、サプライチェインマネージメント、認知心理学、組織的行動、労働経済学といった幅広く一見関係がなさそうな分野から重大な研究や概念を選びそれらを巧みに融合させている。プロジェクトを開始する前に必ず直接顔合わせをする。ツールやアプリなどプロジェクトで使うツールはまず早い段階で決めるなり、使い方を学んだりする。始まる前はプロジェクトを過大評価しがちだが動き出す前に一度事前審査を行い危険なところをあぶりだしておく。このような詳細なケーススタディ、鋭い慧眼、実践的なアドバイスにあふれている。製造会社経営者、新人の、あるいは熟練のプロジェクトマネージャー、サービス提供者、フリーランサー、小規模経営者、さらにプロジェクトマネージメントを学んでいる学生たちはきっと本書から得るものが多いだろう。