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原題 Birding Under the Influence
著者 Dorian Anderson
ページ数 272
分野 旅行、アウトドア、自然、動物(鳥)
出版社 Chelsea Green Publishing
出版日 2023/11/02
ISBN 978-1645022237
本文   ビッグイヤーとは1月1日から12月31日までの1年間にわたる鳥類探索の活動である。特定の地域内でいかに多くの種類の鳥を観察できるか野鳥観察者たちが競い合う。仕事や家族などの制限がある人たちは狭い地域でのビッグイヤーに取り組む。時間と資金に余裕がある人たちは州、国、あるいは大陸レベルで行う。本当に恵まれた少数の人たちだけが全世界をまたにかけている。規模や費用に関わらず、ビッグイヤーは新しい場所を訪れて多くの鳥を観察するよい機会になっている。野鳥観察者にとっては週末の息抜きだったり、1年間の目標であったり、人生を変えるような旅であったり人それぞれである。

 マサチューセッツ総合病院の研究者であった筆者は2年以上にわたって取り組んできた研究がいよいよ立ち行かなくなり悩んでいた。別のテーマを見つけて研究生活を続けるか、大学の教壇に立ち生徒の相談役になる道を選ぶか、それとも…。そのとき4年越しのガールフレンドの一言が彼のゆく道を決定した。「自転車を使ったビッグイヤーは?」思いがけない言葉に彼の心は動揺する。子どものころからの野鳥愛好家で休日には鳥を見つけに自然の中に出かけるのだが、ビッグイヤーは裕福な者の道楽だと思っていた。何しろお目当ての鳥を見るために何千マイルを飛行機で移動するのだから。もちろん彼にはそんな資金もない。しかし、自転車で移動すれば、費用は掛からないしもっと自然と一体になれる。何より環境にもやさしい。

 もちろんそれは簡単な長距離サイクリングの旅ではなかった。変わりやすい天候、タイヤのパンク、ハイスピードで走り去る車、そして怪我。風変わりな人物、焼けつくようなアスファルト、暗いホテルの部屋、唸る犬、そして煙を吐き出す排気管の終わりなき列。さらに彼は自分の過去にも立ち向かう。アルコール、薬物、高校時代に始まって大人になっても続く危ないふるまい。そこから回復へ道のりは感動的で示唆に富んでいるが、全く異なる新生活へと歩を踏み出した彼の土台となっているのは間違いなく鳥と自然に対する愛である。