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原題 Vital Organs
著者 Suzie Edge
ページ数 320
分野 医学/歴史
出版社 Wildfire
出版日 2023/09/28
ISBN 978-1035404582
本文 医学と歴史の世界に魅了され続ける著者が集めた、世界で最も有名な体の部位にまつわる驚きのエピソードの数々。
・ルイ14世のお尻が、イギリス国歌のインスピレーションとなった
・ヴィクトリア女王の脇の下が、抗菌剤の発展を導いた
・ロバート・ジェンキンスの耳が、戦争につながった

歴史的な人物は、あまりにも遠く抽象的な存在に感じられ、神話や伝説のようなものに思われがちだ。しかし、彼らの体とその部位にまつわるエピソードは、史上で最も愛され、あるいは最も憎まれた人々が、我々と同様に臓器と肢体を持った実在の生き物であったことを思い出させ、親しみを持たせてくれる。

著者は、パーシー・シェリーの心臓が燃えなかった理由、巨人症のチャールズ・バーンの骨が我々に医療倫理を再考させている理由、ヒトラーの精巣に関する奇妙な事件を含む、40以上の身体部位について、利用され、虐待され、発掘され、鑑賞され、実験に使われ、あるいは崇拝された経緯を紐解いていく。

一見すると不気味な目次から、怖いもの見たさのような興味が湧いてくる一冊。実際に読んでみると当然、おどろおどろしい描写や痛々しい場面が随所に見受けられるものの、焦点を当てるのはあくまでも各人物の行動や出来事に関する背景、意図、歴史上での意義などである点が勉強にもなり、とてもおもしろい。
また、さすがは医療従事者の著者だけあり、身体部位に関する解説はきちんと詳細に学術的でありながら分かりやすく書かれている点も本書の魅力だ。
とはいえ、医学や歴史にそこまで強い関心のない読者でも、雑学や豆知識を与えてくれる読み物として楽しめるだろう。