原題 | The Himalayan Masters A Living Tradition |
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著者 | Pandit Rajmani Tigunait |
ページ数 | 225 |
分野 | 東洋思想/哲学 |
出版社 | DROPCAP |
出版日 | 2002/01/25 |
ISBN | 978-0893892272 |
本文 | 未知の領域に入るときはガイドが必要だ。古代からの精神的継承はまさにその役割を果たしてくれる。疑問がわき上ったり道半ばにして障害にぶち当たったりすると霊感や教えを得ようと先人たちに向き合うものだ。本書は古代インドの預言者に始まり現代も続くヒマラヤ伝承の流れを汲んだ偉大な哲人たちの物語を集約したものだ。彼らのような聖人も我々と同じような問題と格闘しやがてその障害を乗り越えて後に続く者のために道を切り開いたのだ。教えを代々引き継ぎながら彼らは大志を抱く人々を高みへと導いているのだ。 どの物語にもそれぞれレベルの異なった求道者たちの気持ちを揺さぶるユニークなメッセージが隠されている。悟りを開いた偉大な存在でも疑念や絶望の瞬間を経験して、やがてそれを乗り越えたことが書かれているからだ。多くの学問に精通していた修行者ナラダは他の人たちに幸せになるすべを教えていたのに、自身はちっとも幸せでないことにふと気が付く。極度の憂鬱に陥ったラーマ王子は内なる平安を求めて何年間もさまよう。偉大な戦士パラシュラーマは失敗に心が折れすっかり生気を失い絶望してしまう。80年以上も厳しい修行に身をささげたヴィディヤーラニヤはそれでも真理を経験することができずにどこがおかしいのかと悩んでしまう。スワミ・ラマは怒りをコントロールできず修行を中断してばかりいる 彼らはそれぞれ苦難の旅の途中でガイドの導きを得て、心の乱れを取り除き精神的探索を続ける勇気をもらう。その師は行く手を阻む障害をどうやって乗り越えるか一つ一つ順番に説明してくれる。忍耐強くあれ。体と心と感覚を磨け。信じる心を持て。経典を勉強しろ。賢人の仲間を作れ。執着を捨てよ。瞑想しろ。できる努力はすべて行い、神の意志に身を任せろ。一瞬一瞬をあるがままに受け入れ、それぞれが意識を広げていくチャンスだととらえよ。やがて眼が開かれ心が整うであろう。そして全く思いがけない時に神の恵みはやってきて神との一体感を与えてくれるだろう。こうした教えは現代にも通じるものがある。 現代ではヨガは肉体的健康や健全性を増すために特定の動きをしたりポーズをとったりということに落とし込まれているが、本来ははるかに広く深遠なものである。体や心や精神をすべてのレベルでバランスさせ調和させるための心身一体となった方法論である。筆者はパワーが湧いてくる物語や教えの数々を通してヒマラヤ伝承の系譜に当たる賢人たちの不滅の英知の数々を私たちに垣間見させてくれる。そしてその教えは何千年も前と同様今日にも当てはまることを示してくれるのだ。 |