原題 | The Food Adventurers |
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著者 | Daniel E. Bender |
ページ数 | 336 |
分野 | 歴史/食文化/旅行 |
出版社 | Reaktion Books |
出版日 | 2023/09/14 |
ISBN | 978-1789147575 |
本文 | 戦間期、トーマス・クック旅行代理店は豪華客船フランコニア号での世界一周クルーズツアーを提供していた。全室ファーストクラスの蒸気船フランコニア号の目的地は、当時西洋の植民地だったインドやその周辺国および東南アジアの国々などである。コロナ禍が落ち着いてきた2021年11月、著者もスターアライアンス世界一周航空券を購入した。トーマス・クック旅行代理店が当時発行した、フランコニア号世界一周クルーズの旅程表と同じ都市を訪れようと計画を練っていたのだ。当時と現在とで地政学的状況が異なっていたり、コロナ入国規制があったりで寄れない都市もあるが、歴史の研究者として、それらの地域を旅した旅行家の記録をたどるのもよいだろう。 こうして本書では、6人の旅行家、2種類の果物、2つのホテルチェーン、1つの食事、そして1杯の水を通じて、読者をグローバルな食の旅へとお連れする。植民地時代のインドネシアの市場で発見された果物「マンゴスチン」から1920年代に豪華客船のダイニングサロンで提供されていたキャビア、1840年代のタヒチの焼き豚から1960~70年代のインターコンチネンタルやヒルトンホテルのレストランに至るまで、世界一周の冒険で観光客たちが何を食べ、何を避け、旅行記、写真、ポストカードでどんな食事を描写していたかを紹介していく。それに伴い、食だけでなく観光の歴史もたどることができる。写真なども豊富に掲載されており、当時の様子がよくわかる。 ちなみに、超豪華フランコニア号の旅とは異なり、著者の航空券はエコノミークラスである。「移動中の豪華な食事やサービスには関心がない」という著者の方針に好感を持つ読者も多いのではないだろうか。 かっちりとした歴史書でありながら、ツアーガイドと一緒に自分も過去のアジアの国々をめぐっているような、不思議でわくわくさせられる一冊。 |