ブックレビュー ブックレビュー

原題 Miracles of Our Own Making
著者 Liz Williams
ページ数 352
分野 歴史、魔術
出版社 Reaktion Books
出版日 2023/09/13
ISBN 978-1789144710
本文 魔術は古代から歴史上大きな影響力を持ってきたが、アカデミックな歴史研究で扱われるようになったのはごく最近のことだ。本書は、イギリスを中心として、異教の魔術を古代から現代まで概観し、その正しい姿を提示しようという試みである。

 人類は古代から、現実を魔術によってコントロールしようとしてきた。本書では、古代ケルト族の間で信仰されたドルイド教を起点に、イギリスがローマ人やサクソン人に支配された時代、そしてヴァイキングやノルマン人の時代に信仰された異教の魔術を検討する。さらに、魔女裁判が行われ、宮廷で占星術師が活躍し、民間呪術を行うカニングフォークが跋扈した中世から近代にかけての魔術のありようを考察し、現代西洋魔術の思想、教義、儀式、実践作法の源流になった19世紀末の隠秘学組織「黄金の夜明け団」、そして20世紀に入って、オカルティストのアレイスター・クロウリーや、現代でも信仰を集める魔術的な宗教「ウィッカ」などについても筆を伸ばす。

 異教徒的な魔術は、悪用しようとすればできる危険なものでもある。本書を読めば、古代から人類の心をとらえてやまなかった魔術の歴史を知ることができるとともに、その正しい姿を認識することができる。本書は、小説家としても活躍する作者が、読者を魔術の不思議で魅惑的な世界へといざなう。