ブックレビュー
| 原題 | Small Farm Republic |
|---|---|
| 著者 | John Klar |
| ページ数 | 240 |
| 分野 | 自然、環境、農業、社会 |
| 出版社 | Chelsea Green |
| 出版日 | 2023/06/29 |
| ISBN | 978-1645022190 |
| 本文 | 共和党が環境の敵であり民主党がその救世主であるという認識が広まっているがそれは単純すぎるというものだ。確かにミッチ・マコーネル上院議員は炭鉱企業の便宜を図っているが、バラク・オバマも同じようにバイオ化学メーカーの権益を擁護していた。左翼は気候についてことさら騒ぎ立てたり偽りの新しいエネルギー源やテクノロジーによるコントロールを通じて「グリーンな」未来をを作り出すのだと、マントラのように唱えており、一方右翼では差し迫る環境への脅威を否定しこの上なく破滅的な道に通じかねない産業界の規制緩和を際限なく求め続けている。どちらのやり方も明るい未来には結びつくことはない。環境問題に対する大きな指針として出されたグリーン・ニューディールも実現不可能な大それた目標を設定するだけで現実味がない。それよりも政治的なバックグラウンドを問わず地域農業を支援するという点でアメリカ国民を団結させる道はないだろうかと筆者は模索する。 アメリカの小さな農場では食べ物を生産するのにCO2の排出量は少なく化学物質もあまり使わない。地元で消費すれば輸送距離も短くて済む。製造時に大量のCO2を発生するだけでなく空気や水や土壌を汚染し、完成後ははるか遠くまで運搬されるソーラーパネルやEVよりもずっと環境にやさしい。消費者は自分達が食べる食べ物の調達先をあまり気にしないので小規模農業など廃れてしまっていると思い込んでいる。こうした誤解こそ巨大な農業企業や加工業者が環境や人間の健康を犠牲にして幅を利かせる下地となってしまっている。商業的農産物に頼り切ってしまっているこの現状を変えるすべはあるのだろうか。本書では食卓と農家を、さらに人間と土との間にある溝を埋め新しい絆を作り上げようとしている。 土壌劣化、とどまるところを知らない環境汚染、食料不安、悪化するばかりの人の健康。そんな中機運は高まってしかるべきなのに、政治の世界ではこの惑星にとって最後の望みとでもいうべき小さな再生農業をサポートする声はほとんど上がってこない。どの立場の政治家たちも大型農業生産法人や失敗した「再生エネルギー」インセンティブを捨て去り小さな農業の権利を守る戦いを始める時だ。 |
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