原題 | At Work in the Ruins |
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著者 | Dougald Hine |
ページ数 | 224 |
分野 | 環境/社会/エッセイ |
出版社 | Chelsea Green |
出版日 | 2023/02/09 |
ISBN | 978-1645021841 |
本文 | 作家であり、社会思想家の著者は、人生をかけて気候変動についてあらゆる人々と対話し続けてきたが、コロナ感染症による世界中の混乱から2年目のある日、やめようと思った。それはなぜか。 気候変動という問題は、気候科学では答えられないことを人類に提示しているのではないか。大気中の化学的物質が引き起こす不運なできごと、と単純に考えてよいのか。実は、よりよい世界への解決策として取り組まれてきたことが、結果として自分たちを困難に導いているのではないか。 問題にどう向き合うかによって結果は決まると著者はいう。どういうことかというと、答えの出し方によって、取り組んでいる問題がどんなものなのかと考えるための思考が左右される、したがって追究すべき課題に対する理解の仕方が変わってくる。言い換えると、現代のように、科学を信仰している社会では、科学は正当化のための最も重要な情報源と信じられている。すると、科学が解決できない課題について話し始めることさえ難しい、と著者は主張する。 本書は、人間が科学という「色メガネ」に過度に依存すると、周囲や目の前にある危機の本質がわからなくなり、状況をさらに悪化させるだけの「解決策」が導き出されることを述べている。人間が生きてきた奇妙な月日をふり返り、科学に信頼を寄せすぎた長い歴史について考察している。世界が窮地に陥っているのであれば、人類が向かうべき方向をどう見つけるか、どんな課題に人類の人生を捧げる価値があるかを問うことも考察している。 人類が立たされている苦境に、本書は正面から向き合っている。新型コロナウイルス感染症に振り回された歳月の意味を改めてふり返ろうとする人もいるだろうが、本書はそんな人たちにとっても参考になるはずだ。たとえ地球が廃墟になったとしても、人類がやるべきことを見つける一助になるはずだ。 |