ブックレビュー
| 原題 | Simulating the Cosmos |
|---|---|
| 著者 | Romeel Davé |
| ページ数 | 248 |
| 分野 | 宇宙科学、天文学、コンピューター |
| 出版社 | Reaktion Books |
| 出版日 | 2023/01/01 |
| ISBN | 978-1789147148 |
| 本文 | 「Universe」シリーズの1冊目(次巻は刊行前)にあたる。 現代の天文学にはコンピューターが欠かせない。特に、宇宙や銀河の進化などの複雑な問題に対しては、スーパーコンピューターで膨大な量の計算を行う数値シミュレーションが必須だ。「宇宙が今ある姿に見えるのはなぜか」を解き明かす最先端研究の概要を、豊富な写真や図版を交え、一流の研究者が親しみやすい語り口で解説する。 ビッグバンから現在の宇宙へ至る過程を再現する第一歩は、宇宙の構成粒子に関するシンプルな物理法則を用いた計算だ。しかし、そこから先に進むためには、宇宙の膨張や種々の物理学的な力といった要素を考慮する必要がある。本書では、まずいろいろな要素を計算に組み入れて「宇宙をコンピューターに取り込む」過程を丁寧に解説する。さらに、「コズミックウェブ」や「銀河の誕生」などの事例について、シミュレーションの結果と実際の観測結果の比較検証による研究手法を紹介する。シミュレーションで生まれた銀河の画像と本物の銀河の写真を、あなたは見分けられるだろうか？ 現代宇宙科学で最もホットなこの分野は、機械学習等の技術で今後さらなる発展が見込まれる。いつか、銀河系や太陽系の完全な進化モデルも作れるかもしれない。 テーマの性質上、数式や難しい専門用語も多い。しかしシミュレーションの基礎となる現代宇宙論の研究史や最新の銀河研究について多くのページが割かれており、専門知識を持たない読者でも理解しやすい工夫がされている。「はじめに」で著者が語る宇宙に興味をもったきっかけから現在のキャリアに至るまでの過程は、科学に興味がある学生読者の参考にもなるだろう。 |
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