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原題 beyond thoughts
著者 Joseph Nguyen
ページ数 194
分野 自己啓発、文学(詩)
出版社 DROPCAP
出版日 2022/10/18
ISBN 978-8986406534
本文 本書籍は「不安や気分の落ち込み、罪悪感や恥、ネガティブ思考や心の痛みの根本原因を探り、癒してくれる詩集」と紹介されている。各ページに一篇ずつ、時に1~2行、多くても十数行の長さで綴られた言葉は、ごく短い形式の詩として、また一種のアフォリズムとして楽しむこともできる。が、読者のレビューを見ると、むしろ自己啓発書、精神哲学書として高く評価する声が多い。

通常の自己啓発書と大きく異なる点は、「読者が自身の内なる可能性を発見できるよう、自分は入口まで導くだけ」という著者のスタンスだろう。章立てに沿って並べられた詩を読み進めていくうちに、読者はおのずと自己内省のプロセス(著者の言う「旅」)に入っていくことができる。すなわち、自分の悩みの本質に向き合うことによって希望を見出し(「掘り下げる」「私は何者なのか」「希望」の章)、変化に対する恐れを手放し(「恐れを乗り越える」「手放す」の章)、過去と現在、善悪や正誤といった二元性を超えて物事を見られるよう導かれていくのである。とりわけ重要なのは「思考と考えることを超越する」の章で、「我考える、ゆえに苦悩する」という言葉(p.58)に象徴されるように、本来移ろうものである「考え」そのものに囚われすぎず、それを容れる器として「在る」ことの大切さを説いている。これは著者の別の本とも重なる視点である。

すでに述べた通り、一つ一つの詩は平易な語彙を用いた短いものばかりだが、その分含蓄に富んでいる。一例を挙げれば「この世界は、私たちを幸せにするために存在してはいない/私たちが自分の力を自覚し、何が起きようと幸せになれる、と気づくためにある」「あなたは認められるために、ここにいるのではない/例外になるためにいるのだ」「私たちが持つ最大の力の一つは、選択である」「恐怖と渇望はコインの両面」「人生は不公平なのではない、釣り合いが取れているのだ」などである。

最後に本書の体裁について付け加えるなら、いわゆる「コンクリート・ポエトリー」のような、視覚効果もねらったレイアウトを用いている箇所もあり興味深い。文章は全て小文字で綴るというのも、著者の美学のようだ。