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原題 Today I'm Alice: Nine Personalities, One Tortured Mind
著者 Alice Jamieson
ページ数 352ページ
分野 ノンフィクション/自伝
出版社 Sidgwick & Jackson
出版日 2009/5/1
ISBN 978-0283071010
本文 まだ10代だったころ、アリスの身に妙なことが起こる。ときどき断片的に記憶が途切れるのだ。それ以来、「役立たず」、「失敗作」という言葉が自分に浴びせられているのが聞こえてくるようになる。また、幼い女の子が性的虐待を受ける夢を何度も見るようになった。目が覚めたときに自分がその女の子ではないことを喜ぶと同時に、いったいそれが誰なのか不思議に思った。この悪夢は彼女の脳裏に焼き付けられ、成長と共に、よりリアルになっていく。

太ることを過度に恐れ、摂食障害になったアリスは、やがて強迫神経症にもなり、心を落ち着けるために親の目を盗んではキッチンにあるアルコール類でカクテルを作り、学校でも隠れて飲むようになる。

その後、精神病院に入院したアリスは、多重人格障害と診断される。彼女の中に存在するアリス以外の人格は、彼女の幼児期の思い出を断片的につないでいく。こうして、アリスの虐待され続けた日々が明らかになるのだった……。

悲惨な幼児期を綴った自伝は多くあるが、本書は悲惨な体験が綴られているにもかかわらず、どこか美しく、読み応えがある。