原題 | What Remains? |
---|---|
著者 | Rupert Callender |
ページ数 | 288 |
分野 | 社会、心理 |
出版社 | Chelsea Green Publishing |
出版日 | 2022/09/15 |
ISBN | 978-1645020509 |
本文 | 本書は筆者がパンクミュージックやアシッドハウスを通じて学んだことやDIYの精神を発揮して、パ-トナーのクレアとともに歴史上初の、そしておそらくは最後のパンク葬儀屋になり、この21世紀初頭になっても旧態依然たる葬祭業を揺るがした物語である。 著者が葬儀屋に身を転じてからほぼ20年。イギリスの葬儀の特徴であるビクトリア様式をとる主流の大手葬儀社とはかなり違ったやり方をしてきた。高額な棺を売るより質素な遺体を囲み遺族と悲しみを共にしたり、黒いスーツを身に付け静かな物腰で決まりきった口上を述べるよりも、みすぼらしい車で乗り付けても誠実にふるまったほうが残された家族にとって良いと思ったからだ。一方で心も頭も、さらには生活も、この終わりのない悲しみにさらすことで自らを危険にさらすことにもなってしまう。 いつものように家で怠惰な時間を過ごしていた彼はふと、神の啓示のように死者を弔うことを思いつく。自身の悲しくつらい離別体験(寄宿学校入学や母の死去など)と一世を風靡したミステリーサークルの製作を通じて得た生の感情とがまじりあって、彼の挑戦を後押しする。調べてみると遺体を埋葬するのに特別な許可は必要なく誰にでもできることがわかった。誰に教わった訳でもないそのやり方はとてもユニークだ。風が吹くすさぶ浜辺を棺を担いで歩いたり、ビールのシミだらけのテーブルに置いた納骨箱といっしょにパブに腰を落ち着けたり、父親を火葬するための薪に火のついた矢を放つ子どもの手助けをしたり、現代のオカルト儀式をパフォーマンスアートに仕立て上げたり、ハウスユニットグループKLFのバンドメンバーと「人ピラミッド」を企画したりする。そこに息づいているのは技と美、真実と人間性、そして本物の真心だった。 |