ブックレビュー ブックレビュー

原題 THE RESILIENCE BLUEPRINT
著者 Dr Dani Gordon, Rachel Mills
ページ数 288
分野 健康, 医療
出版社 Orion Spring
出版日 2023/04/13
ISBN 978-1409197089
本文  レジリエンスという単語はもともと物理学の用語で、「弾力」や「復元力」を意味する。ある物体に何らかの外的な圧力がかかった際、その状態から元に戻ろうとする力を表す。そこから転じて、心理学や精神医学の分野では、人が困難に直面したとき、その状況に順応する力を意味する言葉として使われるようになった。
 レジリエンスに関する治療を行っている著者のもとには、さまざまな症状を抱えた患者さんが訪ねてくる。ところが、その中には非常に健康的な生活習慣をこころがけていながら、容態が一向に改善しない患者さんも少なくない。メグもそのうちの一人だった。彼女は週三回ヨガのクラスに通い、オーガニック食品を食べ、大量の水とサプリメントを飲み、アルコールもタバコも控え、ほぼ毎日一万歩のウォーキングを欠かさなかった。それだけ健康管理を徹底していたが、メグは日頃のストレスで押しつぶされそうになっていた。ここ数年は症状が悪化し、動悸がしたり、夜は不眠に悩まされるようになっていた。
 著者によれば、レジリエンスに関わる問題は患者さんによって四つのタイプに分けられ、そのタイプごとにアプローチが異なるという。著者はメグの普段の食事内容や飲んでいるサプリメント、運動や睡眠などの生活習慣全般を見直しながら指導を行った。その結果、三ヶ月ほどすると、メグの容態は見違えるほどよくなり、彼女は心おだやかで自信に満ちあふれるようになっていた。
 本書はレジリエンスやメンタルヘルス、疲労回復の治療を専門とする著者が、レジリエンスのタイプ別に、心身の不調を解消する具体的な手法を紹介していく。
 社会を取り巻く環境が激しく変化し、混迷の度を深める今日、レジリエンスがあるかどうかは重要な意味を持つ。本書はそうした時代を生き抜くレジリエンスを得るために、一種のblueprint(詳細な計画・基本的な枠組み)を提供してくれる一冊である。